前回の睡眠障害はダイエットの敵であるに続き今回は、いびきなどの睡眠障害がストレスや不安障害・うつの原因であることの話をします。

睡眠障害としてのいびき

十分な睡眠がとれないと、体の疲れがとれず翌日体がだるいことは、皆さん経験のあることだと思います。

いびきや睡眠時無呼吸症候群で十分な睡眠がとれない日々が続けば、体の疲れがとれないだけでなく、精神的にも疲れてくることは容易に想像できると思います。

本当にそうであるか、2002年の約700人の睡眠障害のある患者さんとそうでない人の比較検討の結果、睡眠障害のある患者さんのグループのほうが、1.4倍うつ病に罹患していたという。
(Smith R, Ronald J, Delaive K, et al. What are obstructive sleep apnea patients being treated for prior to this diagnosis? Chest. 2002;121:164–72.)

研究以降、睡眠障害のある患者さんの方が精神的ストレス、不安障害、うつになりやすいとの多くの研究報告がされてきました。
(Ejaz SM, Khawaja IS, Bhatia S, et al. Innov Clin Neurosci. 2011 Aug;8(8):17-25. Obstructive sleep apnea and depression: a review.)

「セロトニン」のコントロールで改善されるストレス

それらの研究で最近注目されているのは、脳内の神経伝達物質であるセロトニンです。
このセロトニンはヒトの古い脳である海馬で、不安障害やうつの原因となっていることが1990年代からあきらかにされてきて注目されている脳内伝達物質なのです。
この吸収が高進することにより不安障害やうつが引き起こされていることがわかり、治療薬としてセロトニン再吸収阻害薬SSRIが開発されました。SSRIは実際に不安障害やうつに有効でそれまでの抗うつ剤や安定剤より処方数が多くなっています。

睡眠障害とストレスやうつとの関係を明らかにする一つの方法として、睡眠障害のある患者さんの脳内セロトニンについて最近関心がたかまり、研究がおこなわれました。臨床研究の報告でSSRIを投与すると睡眠の質が向上しストレスが減るといった報告がされています。
(Shahsavand-Ananloo E, Berenji F, Sadeghniiat K, et al.Comparing effects of citalopram with fluoxetine on sleep quality in patients with major depressive disorder.Eur Rev Med Pharmacol Sci. 2013 May;17(9):1155-61.)

いずれにせよ、いびきや睡眠時無呼吸症候群があると睡眠時に疲れがとれないばかりか、不安障害やうつを引き起こしやすくなることがわかってきたのです。健康な生活のために、いびきや睡眠時無呼吸のない睡眠が重要なことは理解いただけたと思います。

【著者紹介】

都筑 俊寛(ツヅク トシヒロ)
・日本耳鼻咽喉科認定専門医
・NPO法人 日本臨床レーザー協会 会員
いびきや鼻炎の外科的治療を行ないいびきレーザー治療では年間3,000件以上の実積を持つ。
『 新「名医」の最新治療 2013』(週刊朝日増刊号)で全国160人の名医として掲載された。
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